今回のコラムは、私がずっと以前、政府開発援助の技術通訳をしていた頃の出来事です。

2004年12月ごろに書いた旧ブログから、内容を一部加筆・修正してお届けします。

日本では、英語が好きでも嫌いでも、この言語と全く無縁でいることは難しいですよね。

どうせなら、英語がわかったらこんないいことがあるって想像しながら学習したくありませんか。

そのひとつとしてあげたいのが、「英語を通じて異文化の人と交流することで、自己中心的な価値観が多様なものの見方に変わる」ということです。

これに関して私が体験したエピソードをひとつ。何年か前、ODAの仕事で、発展途上国からの技術研修員のアテンド通訳をしていたときのこと。

6名の研修員はすべて男性で、イスラム教の人も複数いました。研修は数ヶ月に及び、その間、彼らとは毎日顔を合わせます。

その年は、11月頃からイスラムのラマダン(断食月)が始まり、日の出から日の入りまで、イスラム教徒は水すら飲まずに精神修養につとめます。もちろん、研修は通常通り続けるのです。

で、ラマダンに入る前日、アフリカ出身のあるイスラム教徒が、私と同僚(ともに女性)に対して、遠慮がちにこう切り出しました。

「ほんとに、申し訳ないんだけど、できたら、でいいんだけど・・・」

なんだろう、と思って聞くと、なんと、ラマダンの期間中は、自分たちの気が散らないように「ミニスカートや派手めの服は控えてほしい」とのこと。

少しでも気持ちの平静が乱れるようなことはご法度だから、とか。

突然の要望に、私たちの反応は・・・驚きあきれ、憤慨したのです。

目の前でそう発言したわけではありませんが、

「何やの、それ。ここ日本やん!(すみません、関西弁です。) 自分らが勝手に来といて、なんでこっちが合わさなあかんの?あたしら、あんたの彼女と違うで!」

「ミニスカートがあかんって、そしたら長いの買ってくれるんか」

・・・などと、ふたりして陰で言いたい放題でした。

が、ひとしきり騒いだ後でふと冷静になって考えてみると、彼は、別に私たちに命令したわけではなく、自分たちの風習を少しでも考慮してくれればありがたいなあ、と丁重にお願いしただけなのです。

私も同僚も、ここでちょっと反省モードに・・・。

その後の1ヶ月間、私たちがどんな服装だったのか忘れましたが、初日のことだけはよく覚えています。

どこまでが許容範囲か確かめたくて、「ミニではないがひざよりは上」のスカートで、黒地にショッキングピンクの入ったスーツという実に微妙な格好で部屋に入ると、例の研修員が近づいてきました。

うわ、クレームか、と身構えると、彼はひとこと、”Thank you”とお礼を言って微笑んだのです。

なんだ、合格だったのか。私の服装は、気配りのきいたものととらえられたようです。

あれ以来、ラマダンの時期を迎えるたびにそのときのことを思い出し、多少は服装に配慮するようになりました。

たとえ日本国内にいるときでも、異文化の考え方を尊重することの大事さを実感した一例です。

こちらが海外に出て行ったときは、逆の立場になるわけですから。

☆ ☆ ☆

このエピソード、すっかり忘れていましたが、10年以上前に書いたこのブログを読んだときに(ああ、そんなことがあったあった!)とはっきり思い出しました。

ついでに、その研修員がどの国のなんという名前の人だったかも覚えています。

自分も同僚も、こんなことで大騒ぎするなんて若かったな~、というか青かったな~、と苦笑いです。

昔書いたメルマガやブログの文章は、全体的に今よりテンションが高いです。自分が書いたものなのに、続けて読むと(・・・このノリ、ついていけんわ)と疲れます。